日本の年金制度は、3階建ての構造になっています。1階部分に当たるのが、日本国内に住む20歳から60歳未満の全ての方が加入する国民年金です。2階部分は、会社員や公務員の方が加入する厚生年金です。会社員、公務員の方は、国民年金にプラスして、この厚生年金に加入することになります。
さらに3階部分は、企業年金や私的年金が該当し、国民年金や厚生年金にさらに上乗せする形で加入します。
1階、2階部分の公的年金は、働き方や暮らし方により、それぞれ加入します。自営業者や学生などを、国民年金の第1号被保険者と呼び、その人数は、2021年3月末時点で約1449万人です。会社員に公務員などの第2号被保険者は、約4513万人います。さらに、第2号被保険者に扶養されている専業主婦(夫)などは第3号被保険者となり、約793万人です。
公的年金は、生きている限りずっと年金をもらい続けることができる、いわば終身年金のような役割があります。さらに、もしも障害を負ったときには障害年金、年金に加入している方が亡くなった時には家族に遺族年金が支給されます。
今回、納付期間の延長が検討されているのは、1階部分に当たる国民年金についてです。
国民年金の保険料は、月額1万6590円です。現在は20歳から59歳までの40年間の納付となるため、年間19万9080円、40年間では、796万3200円となります。
もしも、納付期間が20歳から64歳までの45年間に延長されると、45年間で895万8600円となり、99万5400円多く保険料を納めることになります。なお、国民年金の保険料は、年度ごとに見直され変わるため、おおよその予測される金額となります。
納付期間が延長され、払う保険料が多くなれば、受け取る年金額も増える可能性があります。厚生労働省は、2019年の財政検証において、納付期間が延長された場合の試算を行っています。ここでは、納付年数が延びた分に合わせ、基礎年金が増額される仕組みを想定しています。
例えば、仮に現在の年金額で計算すると、老齢基礎年金が月額6万4816円(2022年度、40年間保険料を納めた場合の満額)に対し、もしも、納付期間が45年に延長された場合、基礎年金額は 45/40 倍、7万2918円となります。
もし納付期間が延長されたとしても、全ての人の負担が大きくなるわけではありません。今よりも負担が増すと考えられるのは、60歳以降、国民年金の第1号被保険者である自営業の方や会社を退職した元会社員の方などです。
60歳以降も再雇用制度や定年延長などで一定の条件を満たし働く方は、厚生年金に加入することになっており、現在の制度でも保険料を負担しています。
もし、納付期間が延長されたら、どうしたらよいのでしょうか。対策として考えられることは次の通りです。
60歳以降も働き続けることで収入が得られ、国民年金の保険料を納めることができるでしょう。
早期にリタイアしようと考えているのであれば、60歳以降の年金保険料を貯蓄しておけば問題ありません。リタイア後の生活費とは別に、65歳までの保険料をしっかりと準備しておきましょう。
本人や配偶者、世帯主の所得が一定額以下の場合には、申請することにより、保険料の全額または一部の納付が免除される制度があります。申請が通ると、受給資格期間に含まれ、なおかつ年金額にも反映されるため、未納となる場合に比べると年金額は多少プラスになります。納付が難しい場合は忘れずに申請をするようにしましょう。
納付期間の延長は、まだ決定されたものではありません。政府は2024年に結論を出し、2025年の通常国会での改正法案の提出を目指しています。
年金制度については、制度の変更があったり、毎年額が変わったりと、複雑な部分があり分かりにくくなっています。年金情報を定期的にチェックし、老後のライフプランや経済設計の参考にしましょう。
厚生労働省 年金制度の仕組み 年金制度のポイント
厚生労働省 2019(令和元)年財政検証結果レポート
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
執筆者:勝川みゆき
ファイナンシャルプランナー2級・AFP